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新たなものがたりが始まります


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レストランで食べるおいしいサラダ。そのお皿の向こうにいるのは...?このトマト、誰が作ったの?

今日食卓にのった食べものと、自分との距離を考えたことがありますか?
そういえばこれ、どこから来たんだろう...そんなことをあまり考えなくなったわたしたち。

何年か前までは野菜もお魚も対面で販売され、
お店のおじさんが、今日のおすすめを教えてくれました。

食べものを選択する際に、コミュニケーションが必要とされていた時代。

「アジが安くて旬だから、ちょっとおまけしてやるよ」
「じゃあ、今日はアジフライにしようか」

そんなふうに毎日のばんごはんが決まっていました。

今では食材の選択にコミュニケーションが介在する余地はありません。
食材は美しくカットされ、さらにぴっちりとパックされて、店頭に並んでいます。

畑の風も、潮の香りも感じない食べもの。
どこで採れたのか、誰が作ったのかも、知るすべはありません。

自分のいのちを作る食べもののことを、何も知らずに食べているわたしたち。
ほんとうにこれでいいのかな、そんな風に思ったことはありませんか。

思ったら、一歩踏み出してみましょう。
畑に行き、土を触ってみましょう。
雨にぬれた土のにおいや、おひさまの下の草いきれや、もぎたてのトマトの香りを、
体験してみましょう。

ひとりひとりが少しずつ歩き出せば、きっと何かが変わります。

新たなものがたりが、これから始まります。

手島奈緒

※手島執筆のえがおマルシェは今回で終了です。ご愛読ありがとうございました。

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なぜ有機農業なのか②

健全な土、ふかふかの土、ミミズがたくさんいる土...。
なんとなくいいイメージがありますよね。

しかしイメージとはあいまいなもの。
いい土の条件は3つあります。

そして、そのうちのふたつは数値化が可能です。

①物理性→気相・固相・液相 数値化可能
②生物性→土壌中の微生物層 
     数値化は不可能だが土壌由来の病害が出ている場合は整っていない
③化学性→分析による数値化が可能

この3つのうち、どれかひとつのバランスを欠いても、いい土とは言えません。

さて、土壌分析は③の化学性を確認するために行います。

畑の土はそれまでに何を投入してきたかにより肥料を保持できる力が決まっています。

それは塩基置換容量(CEC)という数字で見ることができ、
この数字が大きいほど保持できる力が大きいと考えられます。

CECの小さい土に大量に肥料を入れれば、土が肥料をつかまえておくことができませんから、
肥料は無駄になるばかりか、環境汚染につながります。

「鶏糞堆肥を1トン入れたら大量に虫が発生した」なんて話をよく聞きますが、
それは有機農業だから虫が発生したわけではなく、チッソ分が多すぎたからじゃないかな~と思います。


有機農業とは昔ながらの農業というイメージが強く、
なんとなく原始的な農業と思っている方が多いような気がしますが、
農薬や化学肥料を使用せず、品質のよい野菜を栽培するためには、
上記のように、科学的な数値に裏付けされた最先端の技術が必要なのですね。

有機農業とは、最先端技術を駆使して初めて可能になる農業であるともいえます。

さて、病害虫が発生する原因は、施肥にあります。

作物の体内に過剰なチッソがあると虫や病気の原因になることが知られています。

曇天が続き光合成がじゅうぶんにできないと、窒素過剰になることもありますが、
おおむね施肥の間違いから植物が窒素を吸い過ぎて過剰になっていることの方が多いもの。
また、チッソ分が足りずに正しい生育をしていないものも、虫や病気に必ずやられます。

植物もある意味人間と同じ。
健康に生育しているものは、病気にもならず虫にもたかられず、順調に生育するのですね。

土壌分析診断は、有機農業の基本でもあります。
数値に基づいた施肥を行い、物理性と生物性を整えれば、健全な作物を栽培することが可能なのです。

手島奈緒

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なぜ有機農業なのか? ①

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有機農業の畑でよく見かける混植。これは葱とアブラナ科野菜の混植です。


環境保全型農業、安全・安心...。

有機農業にはそのようなイメージがあります。
一般栽培よりは農薬が少なくて、化学肥料も使ってないから安心。
ほとんどの人がそう思っているのではないでしょうか。

なぜ、有機農業がいいの?
本当に有機栽培でできた野菜はおいしいの?

本当は、きちんと理由があるのですが、
そういったことはあまり知られていません。

ちょっと難しい話題になりますが、「なぜ有機農業がいいのか」について
考えてみたいと思います。

大量生産・大規模効率化・機械化により、食糧増産を目指した近代農業。

農薬の多投、相次ぐ事故、化学肥料前提の栽培...その結果の土地の疲弊。

そういった近代農業を見直し、その考え方に相対するものとして登場したのが、
昔ながらの土づくりを基本とした有機農業でした。

有機農業の柱はいくつかありますが、わかりやすいのは肥料の違いです。
有機農業では、有機物を利用した堆肥やボカシ肥料を作り、それを土に還元します。

その結果、腐植・微生物層が豊かになり団粒構造が作られて、健全な土になります。
この土の力で安全で安心して食べられる野菜を栽培する、
有機農産物を流通している会社のカタログを見るとそのように書いてあります。
※今回いうところの「有機農業」は「有機JAS認証」のことではありませんのでご注意ください。

ところで、野菜は有機物を吸収することはできないことをご存じですか。

土の中に入れられた有機物は、一度微生物が分解し無機物になってから、ようやく吸収されます。

化学肥料は速効性の肥料、有機質肥料は遅効性の肥料。
有機農業をすると初期生育が悪いというのは、微生物が分解するタイムロスがあるからなのです。
化学肥料には、効かせたいときに肥料が効くという最大のメリットがあるのですね。

さて、作物の収量を左右するのは、窒素肥料です。
堆肥の中のチッソ分は、土中でどのように作物に吸収されるのでしょうか。

堆肥の原料であった鶏糞などのたんぱく質は、堆肥として積まれている間に
微生物が分解・発酵等を行い、主にアンモニア態窒素の状態になっています。

堆肥を土に入れると、アンモニア態窒素は土の中にいる微生物によって硝酸態窒素に変わり、作物に吸収されます。

昨今の研究で、植物はアミノ酸も吸収することがわかってきましたが、
おおむね硝酸態窒素の形で作物は吸収していると考えていいでしょう。

尿素や硫安などの化学肥料も、鶏糞原料の堆肥も、
硝酸態窒素の状態で植物に吸収されているのです。
つまり、原料が有機物であっても、吸収される形態は硝酸態窒素ということです。

この硝酸態窒素、大量に摂取すると毒になることが知られており、
以前から静岡県の茶産地では、地下水への汚染などが問題になっています。

硝酸態窒素は非常に水に溶けやすく、作物にも吸収されやすい性質を持っています。
水に溶けやすいということは、土の中に余剰分としてある硝酸態窒素は
流亡しやすい(地下に流れてしまう)ということです。

つまり、土が保持できる以上にアンモニア態窒素・硝酸態窒素が供給されれば、
有機農業であっても、環境汚染になり得るのです。

チッソ分は作物が自分の体を作るのに使うため、収量UPには欠かせません。

しかし、硝酸態窒素は虫や病気の発生の原因となりますから、
必要以上のチッソ肥料は入れたくない...でも適度に入っていないと収量が増えない...。

では適正なチッソ分はどのようにして知ることができるのでしょう。
それには土の化学性を知ること=土壌分析という方法があります。


次回に続く

手島奈緒

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都市と農村をつなぐツアー

1月15日(金)から1月21日(木)の5日間、
「やまなし企業ファームリーグ」ビジネスモデル発掘バスツアーが開催されました。

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富士山が目の前の遊休農地(1月18日・FUJIYAMAとま~れ)

詳細はこちらをご覧ください。
http://yamanashi.farmleague.jp/index.html

山梨企業ファームリーグでは、山梨県を5つの地域に分け、
各地域でチームを結成してそれぞれの地域資源や強みの検討をしてきました。

今回のツアーは、地域毎の特色を、都市の方たちに発掘・実感していただくのが目的。

それぞれ特色のあるツアーとなりました。

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ぜ~んぶ大豆入り!大豆づくしのお昼ごはん。ものすご~~くおいしかった(1月15日・八ヶ岳エコロジア)

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猟期です。シカ肉のローストです。うまいです(1月15日・八ヶ岳エコロジア)

今回のえがおマルシェでは、ほんの少しそのご報告をいたします。

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「午前中にサルがたくさんいたよ~。午前中に来りゃよかったじゃんね~」と地元のオバサマ。日当たりはよく富士山は美しい(1月18日・FUJIYAMAとま~れ)

富士山麓や八ヶ岳、甲府盆地と地域性が豊かな山梨県。

平地から果樹栽培に最適な傾斜地、そして標高1000m以上の高原まで、山梨県にはバリエーション豊かな農地があります。

その中で耕作放棄地になっているのはどんな土地か。

地域ごとに、特色のある(と言うと変かもしれませんが)耕作放棄地がありました。

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日当たりはいいけど、傾斜地で果樹にいいのはわかるけど...ぶどうハウスの耕作放棄状態はまるでジャングル。片付けるだけでも大変(1月19日・ふ~どフィエスタ)

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荒れ放題だった土地を開墾し、堆肥を入れた状態。水はないけど条件的にはいいところ(1月15日・八ヶ岳エコロジア)

そしてどの地域でも、条件の悪い傾斜地などから放棄されていくのは同じです。

水がない=稲作が無理
面積が小さい=機械化が不可能
傾斜地=作業負担が大きい

でもでも、

そんななかで、イキイキと農業を営む人たちがいます。
また、わざわざ都市から移り住み、見知らぬ土地で信頼関係を築きながら、
経営も成り立たせている人がいます。

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東京から二地域居住を経て果物いっぱいのお庭を作った方のおうち。桃やすもも、ハーブなどに囲まれた、秘密の花園のようなお庭でした。う~ん、二地域居住も素晴らしい...(1月19日・ふ~どフィエスタ)

東京に住みながら週末は山梨県に行って農業を行う「二地域居住」という選択肢があることを初めて知りました。

調布ICから1時間~1.5時間で到着できるアクセスの良さは
確かに忙しい都市生活から脱出し、息抜き・リフレッシュするのにもぴったりです。

山々に囲まれた、自然豊かな土地。
ここで何ができるのか。

ご参加いただいた方たちの心のなかに、小さな種がまかれました。

今回のツアーは最初の一歩。
人と人、人と土地の小さなつながりが生まれたところ。

これがもっともっと大きなつながりになるように。
これからの山梨企業ファームリーグにご期待ください。

手島奈緒

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ニッポンのおコメについて考える 最終回

12月8日、北杜市と企業のマッチングツアーが開催されました。
(北杜市企業のはたけ倶楽部)
その際に見た荒れ果てた棚田の風景が忘れられません。

山と山の間、小さな沢が流れている横に、先人が苦労して作ったであろう棚田はありました。

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急な斜面を段々にして作られた田んぼ。荒れ果てるままにはせず、きちんと耕運されていました。
本当に山と山の間です。

放置されたままだったり、作物はないけど耕運だけしてあったり。
自分はもう栽培はできないけど、荒れ果てたままにしておくには農民としての誇りが許さないのかな。
そんなことを考えました。

棚田の再生という話題が出ると、農民のなかには
「もともと山だったところに無理して田んぼを作ったのだから、山に戻していいんじゃないか。
それよりも平地の耕作放棄地のことを考えるべき」という人がいます。

機械が入らない小さなたんぼ。
そこで大変な思いをして米を作っても、採算が合わずかえって持ち出し分が多くなる。
これでは続けられません。

子どもたちに同じ苦労をさせたくないと親が思っても仕方がない気がします。

日本の米価が劇的に上昇する見込みは、今のところないようです。
(今後ひょっとして海外からの食べものの輸入がなくなれば、可能性はあるかもしれませんが)
そんななか、もっと条件のいい耕作放棄地があるのに、無理に棚田を再生しなくても...と言う人がいるのも、もっともです。

さてしかし、その土地にこもった思いのことを考えると、そのようにバッサリと割り切るのは難しい。
では、棚田を再生し、残していくにはどうしたらいいか。

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放置され、ススキが生えて荒れ果てている同じ谷の棚田。
このまま放っておくと樹が生えてきます。切ないですね

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おそらくこの田んぼの持ち主が、石を積み上げて作った農地です。この石の一つひとつにこもった思いを考えてしまいます。

選択肢のひとつに、経営という枠組みを外してしまうというやり方があります。
生産する米を一般流通に乗せるから立ち行かない。
ならば、そうではないやり方を考えればいいのです。

景観、水資源、生物多様性...さまざまな役割がたんぼにはあります。
とくに、田毎の月など景観保全という観点では、棚田は先人が残した財産ともいえるもの。

オーナー制にして、収穫されたお米を買い取ってもらう。
また企業のCSRとして棚田を借り、景観や水資源を守っていく。
そんな可能性が広がります。

実際にそれらの方法で棚田を再生しているNPO法人なども存在します。

そんななか、えがおつなげてでは昨年、三菱地所さんとの連携で北杜市の3枚の棚田を再生しました。
面積からみれば小さなものでしたが、荒れるがままに放置されていた棚田が再生したことは事実。
そして、本当に大きな一歩でもありました。

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やはり農地はきちんと稼働している姿が一番美しいもの。思わず足を止めてみてしまう、そんな風景も再生されました。

何よりも、復元された棚田を見るたび地域の人たちが元気になります。
農民にとっては荒れた土地を見るのは切ないもの。
自分の田んぼが生き返った...そして、そこで米が生産されている。
どれほどの喜びでしょう。

そしてこの前例が次につながる...そんな広がりも見えてきます。

えがおつなげてでは、企業や大学、その他の連携によって、
これらの資源を守っていきたいと思っています。

手島奈緒

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