ニッポンのお米について考える④
2009年12月22日
秋になるとうるさいほど見かけるトンボ。関東で見かける赤とんぼは「アキアカネ」というそうです。
瑞穂の国・日本。
私たちの国は、豊かな水に恵まれていることが広く知られています。
私の田舎などでは浄水器など必要なく、それはそれはおいしい水道水が味わえます。
水資源が豊富で、しかもおいしい。
それが日本の水の特徴ではないでしょうか。
夏場に水不足などのニュースが報道されることはあっても、概ね日本は水の豊かな国であると言っていいでしょう。
田んぼはこの水資源の保全と重要なかかわりがあるのです。
4月末から9月ごろまで、稲の栽培期間中、田んぼには水が張られます。
あぜはしっかりと水漏れを防ぎ、農民によって水の管理がきちんとなされます。
この間、田んぼは日本全国で何億リットルもの水を貯め、一種のダムのような役割を担っています。
上流に田んぼがある地域ではない地域と比較して、大雨が降った際の河川の増水量が少ないといった研究結果も報告されているようです。
また、田んぼに張られた水は地下に浸透し、その過程で水を浄化する機能も持っています。
小学生が理科の実験で、粘土層・砂の層を通して泥水を浄化するのと同じしくみです。
さらに有害な物質も微生物や稲などが分解・吸収し、地下水へと変わります。
どの地域でも、田んぼは水資源の近くに作られるもの。
田んぼは私たちが利用する水を保全・管理してくれているのです。
これは増富の耕作放棄地の横を流れる沢の写真です。沢づたいにずっと棚田が並んでいます。雪解け水は冷たいので、一度ため池に入れてから利用していたとか。
この機能のほかに、もうひとつ素晴らしい役割があります。
冬季湛水という言葉をご存じですか?
冬の間は通常田んぼから水を落してしまうのですが、稲刈り後再度水を張り春先までその状態にしておく田んぼのことを「冬季湛水田」と呼びます。
昨今、生物多様性という言葉とともに、すっかり有名になりました。
これは水資源の豊かな土地でしかできないという条件付きの農法ですが、ラムサール条約に認定された宮城県の蕪栗沼などで行われています。
主たる目的は雑草の抑制なのですが、冬の間この田んぼは湿地のような機能を持ち、微生物やイトミミズ、魚類などが生育可能となり、さらにそれを捕食する水鳥が渡来するようにもなります。
白鳥が自分の田んぼに飛んでくる...きっとウキウキする体験でしょうね!
さて、冬季湛水にしなくとも、無農薬栽培の田んぼはさまざまな生物のゆりかごになります。
どこにでも見つけることができるアメンボをはじめ、カブトエビやホウネンエビ、めったに見つからないタガメ。
初めて見たときには「なんじゃこれ!?」と驚くことうけあいのカブトエビ(カブトガニじゃないよ)。田んぼの底を小さな足でかき回し、雑草の芽が出るのを抑制します。どこからともなく「湧く」虫で、導入しても根付かないらしいのが不思議ですよね。
ちっちゃなイトミミズや、見つけると「うへえ」と思うヒル、夏の終わりを感じさせてくれるホタル。
そして凶悪な顔つきのヤゴ。
このトンボの幼虫は旺盛な食欲で小さな生きものを食べ続け、秋に羽化して今度は鳥のエサになります。
田んぼを中心に、豊かな生きものの世界が広がり循環しています。
ちっちゃい体のわりに虫を大量に食べてくれるアマガエルくん。葉っぱのふりしてお休み中。初夏に大量に田んぼから発生し、あぜ道を横断してあちこちに旅立っていきます。
単に食糧の供給というだけでなく、日本人の身の回りにたくさんいる小さな生きものを生み出している田んぼ。
あなたがごはんをお茶碗何杯か食べるたび、田んぼの生きものが確実に育まれているのです。
手島奈緒
次回につづく