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なぜ有機農業なのか? ①

茎立菜と大根の混植.jpg

有機農業の畑でよく見かける混植。これは葱とアブラナ科野菜の混植です。


環境保全型農業、安全・安心...。

有機農業にはそのようなイメージがあります。
一般栽培よりは農薬が少なくて、化学肥料も使ってないから安心。
ほとんどの人がそう思っているのではないでしょうか。

なぜ、有機農業がいいの?
本当に有機栽培でできた野菜はおいしいの?

本当は、きちんと理由があるのですが、
そういったことはあまり知られていません。

ちょっと難しい話題になりますが、「なぜ有機農業がいいのか」について
考えてみたいと思います。

大量生産・大規模効率化・機械化により、食糧増産を目指した近代農業。

農薬の多投、相次ぐ事故、化学肥料前提の栽培...その結果の土地の疲弊。

そういった近代農業を見直し、その考え方に相対するものとして登場したのが、
昔ながらの土づくりを基本とした有機農業でした。

有機農業の柱はいくつかありますが、わかりやすいのは肥料の違いです。
有機農業では、有機物を利用した堆肥やボカシ肥料を作り、それを土に還元します。

その結果、腐植・微生物層が豊かになり団粒構造が作られて、健全な土になります。
この土の力で安全で安心して食べられる野菜を栽培する、
有機農産物を流通している会社のカタログを見るとそのように書いてあります。
※今回いうところの「有機農業」は「有機JAS認証」のことではありませんのでご注意ください。

ところで、野菜は有機物を吸収することはできないことをご存じですか。

土の中に入れられた有機物は、一度微生物が分解し無機物になってから、ようやく吸収されます。

化学肥料は速効性の肥料、有機質肥料は遅効性の肥料。
有機農業をすると初期生育が悪いというのは、微生物が分解するタイムロスがあるからなのです。
化学肥料には、効かせたいときに肥料が効くという最大のメリットがあるのですね。

さて、作物の収量を左右するのは、窒素肥料です。
堆肥の中のチッソ分は、土中でどのように作物に吸収されるのでしょうか。

堆肥の原料であった鶏糞などのたんぱく質は、堆肥として積まれている間に
微生物が分解・発酵等を行い、主にアンモニア態窒素の状態になっています。

堆肥を土に入れると、アンモニア態窒素は土の中にいる微生物によって硝酸態窒素に変わり、作物に吸収されます。

昨今の研究で、植物はアミノ酸も吸収することがわかってきましたが、
おおむね硝酸態窒素の形で作物は吸収していると考えていいでしょう。

尿素や硫安などの化学肥料も、鶏糞原料の堆肥も、
硝酸態窒素の状態で植物に吸収されているのです。
つまり、原料が有機物であっても、吸収される形態は硝酸態窒素ということです。

この硝酸態窒素、大量に摂取すると毒になることが知られており、
以前から静岡県の茶産地では、地下水への汚染などが問題になっています。

硝酸態窒素は非常に水に溶けやすく、作物にも吸収されやすい性質を持っています。
水に溶けやすいということは、土の中に余剰分としてある硝酸態窒素は
流亡しやすい(地下に流れてしまう)ということです。

つまり、土が保持できる以上にアンモニア態窒素・硝酸態窒素が供給されれば、
有機農業であっても、環境汚染になり得るのです。

チッソ分は作物が自分の体を作るのに使うため、収量UPには欠かせません。

しかし、硝酸態窒素は虫や病気の発生の原因となりますから、
必要以上のチッソ肥料は入れたくない...でも適度に入っていないと収量が増えない...。

では適正なチッソ分はどのようにして知ることができるのでしょう。
それには土の化学性を知ること=土壌分析という方法があります。


次回に続く

手島奈緒

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ニッポンのお米について考える④

トンボ.jpg

秋になるとうるさいほど見かけるトンボ。関東で見かける赤とんぼは「アキアカネ」というそうです。

瑞穂の国・日本。
私たちの国は、豊かな水に恵まれていることが広く知られています。

私の田舎などでは浄水器など必要なく、それはそれはおいしい水道水が味わえます。
水資源が豊富で、しかもおいしい。
それが日本の水の特徴ではないでしょうか。

夏場に水不足などのニュースが報道されることはあっても、概ね日本は水の豊かな国であると言っていいでしょう。

田んぼはこの水資源の保全と重要なかかわりがあるのです。

4月末から9月ごろまで、稲の栽培期間中、田んぼには水が張られます。
あぜはしっかりと水漏れを防ぎ、農民によって水の管理がきちんとなされます。

この間、田んぼは日本全国で何億リットルもの水を貯め、一種のダムのような役割を担っています。

上流に田んぼがある地域ではない地域と比較して、大雨が降った際の河川の増水量が少ないといった研究結果も報告されているようです。

また、田んぼに張られた水は地下に浸透し、その過程で水を浄化する機能も持っています。
小学生が理科の実験で、粘土層・砂の層を通して泥水を浄化するのと同じしくみです。
さらに有害な物質も微生物や稲などが分解・吸収し、地下水へと変わります。

どの地域でも、田んぼは水資源の近くに作られるもの。
田んぼは私たちが利用する水を保全・管理してくれているのです。

画像 015.jpg

これは増富の耕作放棄地の横を流れる沢の写真です。沢づたいにずっと棚田が並んでいます。雪解け水は冷たいので、一度ため池に入れてから利用していたとか。

この機能のほかに、もうひとつ素晴らしい役割があります。

冬季湛水という言葉をご存じですか?

冬の間は通常田んぼから水を落してしまうのですが、稲刈り後再度水を張り春先までその状態にしておく田んぼのことを「冬季湛水田」と呼びます。
昨今、生物多様性という言葉とともに、すっかり有名になりました。

これは水資源の豊かな土地でしかできないという条件付きの農法ですが、ラムサール条約に認定された宮城県の蕪栗沼などで行われています。

主たる目的は雑草の抑制なのですが、冬の間この田んぼは湿地のような機能を持ち、微生物やイトミミズ、魚類などが生育可能となり、さらにそれを捕食する水鳥が渡来するようにもなります。

白鳥が自分の田んぼに飛んでくる...きっとウキウキする体験でしょうね!

さて、冬季湛水にしなくとも、無農薬栽培の田んぼはさまざまな生物のゆりかごになります。

どこにでも見つけることができるアメンボをはじめ、カブトエビやホウネンエビ、めったに見つからないタガメ。

カブトエビ おきたま0607.jpg

初めて見たときには「なんじゃこれ!?」と驚くことうけあいのカブトエビ(カブトガニじゃないよ)。田んぼの底を小さな足でかき回し、雑草の芽が出るのを抑制します。どこからともなく「湧く」虫で、導入しても根付かないらしいのが不思議ですよね。

ちっちゃなイトミミズや、見つけると「うへえ」と思うヒル、夏の終わりを感じさせてくれるホタル。

そして凶悪な顔つきのヤゴ。
このトンボの幼虫は旺盛な食欲で小さな生きものを食べ続け、秋に羽化して今度は鳥のエサになります。

田んぼを中心に、豊かな生きものの世界が広がり循環しています。

憎い顔のアマガエルくん.jpg

ちっちゃい体のわりに虫を大量に食べてくれるアマガエルくん。葉っぱのふりしてお休み中。初夏に大量に田んぼから発生し、あぜ道を横断してあちこちに旅立っていきます。

単に食糧の供給というだけでなく、日本人の身の回りにたくさんいる小さな生きものを生み出している田んぼ。
あなたがごはんをお茶碗何杯か食べるたび、田んぼの生きものが確実に育まれているのです。

手島奈緒

次回につづく

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ニッポンのお米について考える①

hakusyu_2.jpg
現在、日本人が一カ月にどれぐらいお米を食べているかご存じですか?

平成21年度の調査はされていないので不明ですが、調べたところ、平成20年度で約5kgという数字が出てきました。

平成20年度は、だいたい毎月4.5kg~5kgの間を推移しています。
一カ月5kgのお米と言えば、一日約170g。一合にも満たないということになります。
一合と言えばちっちゃなお茶碗に軽く3杯。
みんな、他に何を食べてるのかな?

日本人の食生活は、この30年ほどで大きく様変わりしました。

世界各地から輸入される食材をふんだんに使い、世界各地の料理を楽しむことができます。
東京に暮らしていると、フレンチ・イタリアン・中華料理はもう当たり前。
タイ・ベトナム・インドネシア・ロシア・トルコ料理...なんでも食べられます。

ごはんとおかずという日本のごはんの基本は、あってなきがごとく。
中にはおかずは食べるけど、ごはんを抜くという人もいるようです。

現在の日本には、無理してごはんを食べずとも、ものすごく食べものがあるということなのですね。

さて、しかし。
昭和30年代前半まで、食べものはそんなに豊かにはありませんでした。

小さな畑で少量の野菜を作り、中山間地で狭い面積の田んぼを耕していたその時代。
お金を払ってまで化学肥料を買う人はあまりいなくて、肥料と言えば堆肥や家畜糞などの有機質肥料が基本。
日常的に肉がおかずになることなどはまれで、卵だってそれなりの値段がしたのでした。

両親やおじいちゃん、おばあちゃんに「子供のころ、おなかいっぱい白米を食べるのが夢だった」と聞いたことがある人はいませんか。
たった2世代ほど前まで、誰もがおなかいっぱい白米を食べられる時代ではなかったということです。

さて、そんな昭和36年(1961年)、農業基本法が施行されました。

それまでの少数の家畜と小面積の田んぼと畑で農業経営を営む「有畜複合農業」から、「選択的拡大・機械化」に。
この政策(大規模化で効率を上げる農業生産)により、食糧は大幅に増産されました。

ここで化学肥料の使用が奨励され、農業にある種の革命が起きました。
「びっくりするぐらい米が採れてすごいと思った」とその時代を覚えている農民は言います。

米でも野菜でも、収量UPのために必要な肥料は窒素分。
有機質肥料から供給される窒素分に対し、化学肥料の威力はものすごいものでした。

誰でもがおなかいっぱい白いごはんが食べられ、卵や牛乳は日常的な食品になりました。
そして、米が余り始めるまでに、それほどの時間はかからなかったのです。

次回に続く

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あなたの知らないおいしい山梨その④ 山梨ならではの食材いろいろ

「うまいもんだよ、かぼちゃのほうとう」という言葉を聞いたことがありますか。

山梨県に行き、山梨県民にほうとうのことを尋ねると、必ず返ってくる言葉です。

かぼちゃのみならず、じゃがいもやにんじん、ネギといった具だくさんのほうとうは、
一杯食べるとおなかいっぱい。「もう食べられましぇん」と言いたくなる一品。
なぜだかいつまでも熱くて、ふうふうしながら食べてるうちに、体も心もあったまる料理です。

周囲を山に囲まれた山梨は、米を作ることのできる地域が限られたことから、
独特の小麦粉料理・文化が発達しました。

今でこそ日本人は米を食べなくなりましたが、昔はお米が大好きでした。

というより、パンやスパゲッティがなかった時代、主食として最高のものがお米だったということでしょう。

そんな時代に米が食べられなかった人たちに、今の米余りの状況はどのように見えるのでしょう。
お米を大切にしないで、世界中の食べものを飽食し、大量廃棄している私たち。
いつか強烈なしっぺ返しが来るような気がしてなりませんね。

ところで現在健康的なイメージで食べられている雑穀類などは、
昭和生まれの人たちに聞くと「あんなもの二度と食べたくない」ということが多いもの。
貧しい時代の食べもの・米の代用食という思い出が強く、食べる気にならないとよく聞きます。

もちきびやたかきびなどは独特の味わい深さがあり、飽食の時代を生きる私たちにとっては非常に重要な食材のひとつ。
決して米の代用食ではありません。

そういった雑穀類のひとつに、甲州もろこしがあります。

これは生食用ではなく、ひいて粉にして利用するとうもろこし。
今では栽培する人も減り、あまり見かけることはなくなりました。

えがおつなげてでも少しだけ栽培していますが、粉に挽けるほどの量はなく来年の種用に大切に取ってあります。

この甲州もろこしとさつまいも、かぼちゃなどを煮込んでつぶしたものに「おねり」という郷土料理があります。

米が食べられない時代、食べる量を増やすために大量に野菜を入れて増量し、おなかいっぱい食べたという思い出を聞くことが多い料理。
時代が偲ばれます。

いろいろと知らない料理が多い山梨県。
いつか食べてみたいですね。

さて、今回の山梨の実り完熟フェア・オープニングパーティーでは、
ワインやチーズなどのほかに、超メジャーな郷土料理「ほうとう」、
そして甲州もろこしの粉を使ったおまんじゅうなどを準備しています。

えがおつなげての農場でできた野菜類は、
素材の味を楽しんでいただけるよう蒸し野菜に。

またえがおファームが管理している青大豆を使った山梨の和菓子や「清月」さんの青大豆大福も登場します。

食べることで山梨県を知っていただきたい。
そしてその食材の背景を、その文化を知っていただきたい。

今回の山梨の実り完熟フェアは、山梨を知ってもらう第一歩となります。

ぜひ山梨県を、食べて、飲んで、味わってください。

そして、おいしいなと思ったら、いつか山梨県に足を運んでみてくださいね。
もっとおいしいものが見つかること、うけあいです。


えがおマルシェからお知らせ

11月4日(水)~15日(日)、東京丸の内の新丸ビル7F 蒸し料理のお店「musmus(ムスムス)」にて、あなたの知らないおいしい山梨フェアを開催します。

11月4日 18:30~ 山梨フェアオープニングパーティー 開催!
5000円(食べ放題・飲み放題)
ぜひおいしいものを食べにいらしてくださいね!

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あなたの知らないおいしい山梨 その③ お米

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パワースポットでもあるというみずがき山。美しい山です。

山梨県北杜市須玉町の北端に位置する増富地域は、昔から山梨と長野を結ぶ交通の重要地点として栄えていました。
ラジウム温泉で有名な増富温泉は、信玄の隠し湯として知られています。
春には山菜が、秋は紅葉や山の恵みを楽しめる増富は、自然豊かな土地でもあります。

岩肌が美しいみずがき山のふもとに広がる増富地域の標高は約1000m。
雪解け水は豊富にあるけど、お米を作るには寒すぎました。
それでも、その水をため池にして温めて、斜面に棚田を開墾し、長年お米を作ってきました。

日本のあちこち、標高が高く平地が少ない中山間地には、同じような棚田があります。
田毎の月、棚田百選など、昨今この資源を守っていこうとさまざまな活動が行われています。

でもちょっと考えてみてください。

本来棚田は傾斜地を少しでも有効活用しようとした先人の知恵。
少しでも多く米を作ろうとした執念の結晶でもあります。
あの小さな一枚のたんぼ一つひとつに、開墾した農民の思いがこもっているのです。
日本人が米づくりをいかに大切に考えていたか、どれだけ情熱を燃やしていたか。

棚田を見るたび、そんなことを感じてしまいます。

さて、現在の日本では、米づくりは大規模化すればするほど効率がよく、できるだけ手間をかけずに米ができるしくみが作られています。

平たい田んぼで大きな機械を使って一気に作業をすすめれば、面積あたりの売上が多少低くてもなんとかなるもの。
減反や米価格の低迷などを経て、米農家はそうせざるを得なかったと言ってもいいかもしれません。

そんななか、中山間地の小さな面積で小規模の米づくりをすることがいかに大変か。

大規模ならば田植えも稲刈りも一気に機械でできるところ、傾斜地で小さな面積では、すべて手作業になります。
農民が若ければ問題のない作業でも、年をとるととてもやりきれません。
その結果、かつては田毎に美しい月を映し出していた田んぼが、日本全国で耕作放棄地に変わりつつあるのです。

この増富地域の田んぼを復活させよう。
そしてお米を作ろう。
そんな取組が始まりました。

『都市と農山村が、お互いに元気になる社会』をめざし、CSR活動の一環として三菱地所グループとえがおつなげてが取り組んでいる「空と土プロジェクト」。
自然体験や農作業等の交流を通じて、互いの課題を認識し、都市と農山村がともに支えあう持続可能な社会の実現にむけて、さまざまな活動を行っています。

昨年の秋、「空と土プロジェクト」で増富・御門地区の小さな棚田を4枚開墾しました。
直径30cmにもなるススキの根を掘り返し、お田植えをし夏には草を取り、昔の人たちがしたようにこつこつと手作業を繰り返し、この秋お米を収穫しました。

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向こう側の田んぼはまだ草ぼうぼう。昔はこの斜面全部が棚田だったのです。

久しく水が張られたことのなかった、再生された小さな棚田。
急傾斜の条件の悪い土地にあるその4枚には、昔と同じように田毎の月が美しく映っていました。

みんなで作った、一粒ひとつぶが大切なお米。
日本の自然、稲作のこと、田んぼのこと。
いろんなことを考える素材でもあるお米です。

11月4日のオープニングパーティーで、このお米を食べていただこうと思っています。
食べることで、ぜひ私たちの仲間になってください。
そして、まだ耕す人のいない、日本のどこかにたくさんある荒れ果てている棚田に、思いをはせてみてください。


えがおマルシェからお知らせ

11月4日(水)~15日(日)、東京丸の内の新丸ビル7F 蒸し料理のお店「musmus(ムスムス)」にて、「山梨の実り完熟フェア」を開催します。

11月4日 18:30~ 山梨フェアオープニングパーティー 開催!
5000円(食べ放題・飲み放題)
ぜひおいしいものを食べにいらしてくださいね!

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