森林ノ牛乳 その② 森に牛を放す理由
2009年09月21日
現在の日本では、農業の衰退もさることながら、林業も危機的な状況にあります。
林業を営む人々の高齢化と、担い手の不足。
安価な輸入材の使用は、森の手入れをすることすらできないほどの経済的な疲弊を招きました。
以前は、山や森は人が育てるものでした。
そして、春には山菜、秋にはきのこや栗などの木の実、そんな恵みを受け取ることができました。
人と自然は美しく調和していました。
しかし今では、日本の国土の66%をも占める森のほとんどが荒れ果てています。
手入れをしない木々は好き勝手に枝を伸ばし、地面にはおひさまの光も届きません。
森のめぐみなど、受け取るべくもありません。
この森を生き返らせるのに、牛を使う。
そんなことを考えた人がいました。
それが森林酪農です。
では森林酪農って、どんなものでしょう。
まず、牛を森に放すことからスタートします。
体重約600kgもある牛が地面を踏みしめ、下草を食べているうちに、
地面はなんとなくならされてきます。
手前は牛の入れないエリア。あちら側は牛のエリア。
下草はきれいに食べつくされています。
牛は馬の仲間ですから、急なこう配だってへっちゃら。
どんどん森に分け入っていきます。
地面がならされてきたら、人間の作業が始まります。
好き放題に茂った森の木々を少し間引き、地面におひさまの光が届くようにします。
光が届けば新しい命が芽生えるのは早いもの。
牛の排泄物を肥料分に、小さな命が生まれてきます。
こうして森の更新が始まるのです。
間伐された切株から新しい芽が。おひさまをたっぷり浴びて、大きな樹へと育ちます。
そうして人間は、手入れされた森林と、健康な牛たちの牛乳を手に入れることができるようになります。
これは決して「自然」な状態ではないけれど、牛と森、そして人間が美しく調和しています。
のんびりねそべり反すう中...森のあちこちでゆったりとくつろぐ牛の姿が見られます
森の再生と酪農。
全く違うものがふたつ重なり、有機的につながって、できあがるのはとってもおいしい牛乳。
森林ノ牛乳は、このようにして生まれているのです。
次回に続く