都市農村交流コーディネーター入門
5. 都市農村交流コーディネーターに求められる力
5.1 都市農村交流コーディネーターが生み出すべき成果
都市農村交流コーディネーターには、単に活動を推進するだけでなく、様々な関係者にとっての「成果」を生み出すべき力が求められます。生み出すべき「成果」とは次のようなものです。
- 「農村地域」にとって、遊休農地解消、森林保全などが進む、交流によって過疎の地域が元気になる、地域の仕事が生まれてくる、定住化も始まることが期待されます。
- 「都市住民」にとって、元気になる。田舎暮らしへの道筋ができる。新規就農できる、子どもの体験学習、環境教育、病気が癒されるなどの効果が期待されます。
- 「企業」にとって、社内外にCSR活動をアピールできる、企業イメージが向上する、社員の環境意識が向上する、チームワークが醸成される、社員がいきいきしてくる、新たなビジネス展開の可能性が芽生えることが期待されます。
- 「大学・研究機関」にとって、研究の成果を実際にフィールドで検証、活用することができる、学生が元気になる。大学としての差別化ができることが期待されます。
- 「行政」にとって、農村の政策課題が解決される、住民のまちづくりの参画へのきっかけとなることが期待されます。
5.2 物語づくりの力
このように都市農村交流コーディネーターには、多様な関係者に、多様な成果を生み出す力が必要になります。しかし、その基盤にあるものは共通しています。それは「農村地域の資源と、都市のニーズを様々な形でつなげる物語づくり」です。
農村に、どのような資源があるのか、徹底的に調べ、理解すると同時に、都市側のニーズも徹底的に調べ、理解する必要があります。そして、目的と狙いを明確に定めて、どのような農村の資源が、都市でどのように活用されるのか、その一連の流れを具体的な物語としてまとめる力が必要なのです。その際、都市住民が何を求め、何に困っているのかを忘れてはいけません。
この物語が具体的で、説得力があるものであって始めて、人が集まり、コーディネートや事業化ができるのです。そのためには、繰り返しになりますが、両者のことを徹底的に知る必要があります。
5.3 6つの事業スキル
物語ができたとして、それを実現するには、6つの事業スキルが必要となります。
1) 農村現場での経験と知識
最低限の農林業の経験や、農林業の技術の知識が不可欠です。
2) マネジメント能力
個々の作業であるタスク、それをまとめたジョブを管理する力が必要です。また、複数の関係者が関係する中で、それぞれの立場・組織の特徴、性格を考え合わせつつ、人・もの・金・情報・ネットワーク等の様々な経営資源を使って運営していく「協働のマネジメント力」が求められます。
3) 問題解決・企画能力
課題を把握し、解決すべき点を明確にし、目的を設定し、具体的目標から事業仮説を創り、実施計画に落とし込んでいく企画力が求められます。
4) 社会への共感コミュニケーション
様々な関係者の想いを理解できる共感力も大切です。相手のことを理解しようとする姿勢、ファシリテーション、アクテイブリスニング、プレゼンテーションなどの技術、内容と文脈を理解できるリテラシー、人、空間、時代の心を読む力が求められます。
5) 政策の知識
地域づくりの政策には、どのようなものがあり、その目的は何か、どのように活用できるのかを理解する力が必要です。
6) 市場の知識
市場の構造、産業界の仕組み、資源から生産、流通につながるバリュー・チェーン、国内ニーズの動向、グローバル経済の知識などが必要です。