都市農村交流コーディネーター入門

1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6

3. 都市の課題

農村から流出した人口は、都市部に向かいました。それでは、都市の側は大丈夫なのでしょうか?


都市農村交流コーディネーターは農村の課題だけでなく、都市の課題にも目を向ける必要があります。

 

 

3.1 高まる都市農村の交流へのニーズ

内閣府が2005年に実施した世論調査では、「都市と農山漁村の共生・対流」といった新しいライフスタイル関心があるか聞いたところ、「関心がある」と答えた人が52.3%に上りました。特に東京都区部では59.1%が関心を持っています。

 

また、都市と農山漁村の共生・対流の自分での実践について聞いたところ、既に実践している人は1.7%しかいませんが、「願望がある」と答えた人が30.0%に上りました。東京都区部では35.2%が願望を持っています。

 

 

3.2 都市側ニーズの背景


このような都市側のニーズは一過性のものなのでしょうか。利便性も刺激も仕事もある東京都区民の約3分の1が農山漁村の共生・対流を望んでいるのには、次のような不安感が理由ではないかと考えられます。

 

先ず、「食への不安」です。安全な食べ物を食べているのか、食料価格はどうなるのか、多くの都市住民が不安に感じています。都市環境、世界環境の「環境問題への不安」もあるでしょう。

 

「健康不安」「精神ストレス不安」も大きいでしょう。過密人口な都市暮らしの中、競争の激しいオフィスワークに強いストレスを抱えている人は多くいます。それは「将来にわたる雇用(仕事)への不安」にもつながっています。

 

また、子どもを田畑のある場所で育てたい、家族で時間を持ちたいという「家庭不安」も大きなニーズです。毎日の暮らしの中で、つながりを感じることができない「コミュニテイ不安」もあります。そして、「地震不安」「テロ不安」は急速に高まっています。

 

これらの不安は、いずれも、自分の生存や安全に関わる不安です。これまで都市は「自己実現」「自我」という高度な欲求を追い求めて発展してきましたが、その一方で、衣食住等の「生理」「安全」など基盤となる部分に不安が高まっているのではないでしょうか。

 

 

3.3 農村暮らしの壁

しかし、都市住民が農村への憧れを持つ一方で、都市住民には田舎暮しに大きな壁があります。

 

一つは、「家族の壁」です。農村暮らしを希望していても、パートナーや家族が農村移住に反対し、諦めている人もたくさんいます。農業で暮らせるかという不安、田舎で再就職先があるかという「仕事の壁」も大きいでしょう。また、予算に応じた理想の土地や家がなかなか見つからないという「経済の壁」もあります。都市にある豊かな文化・アート・情報から離れること、都会の友人、仕事関係が希薄になってしまわないか不安に感じる「ライフ&ワークスタイルの壁」もあるでしょう。

 

また、子どもが急病になった時の救急病院、年老いた親の介護など「医療福祉の壁」、田舎暮しは近所付き合いが大変そう、田舎で友人ができるか不安という「田舎での人間関係の壁」もあります。

 

「都市の不安」が、そのまま「田舎への移住」につながらないのには、多くの要因があります。

 

 

copyright© NPOえがおつなげて 2007. All rights reserved.
1